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「歌詞の主人公」が変わってきている?2017年頃からの変化とは

歌詞コラム
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以前、歌の主人公は必ずしもヒーローではない?歌詞のキャラクター作りのポイントという記事を書きました。そこで、「歌詞の中の主人公は特別なヒーローである必要はありません。どこかにいそうな、どこにでもいそうな、でも歌の中で生きている一人の人間、を上手に表すことが必要」と書きました。しかし、2017年頃から、それが変わってきているように思います。今回は、歌の主人公の変化についてお届けします。

昭和~平成中期の「ヒーロー」たち

昭和~平成中期に「ヒーロー」というフレーズが登場する歌詞を探してみます。全体的にあまり多くない印象です。その中でも下記をピックアップしてみました。

HERO ヒーローになる時、それは今
HERO 引き裂かれた夜に お前を離しはしない

HERO(ヒーローになる時、それは今)(甲斐バンド)

甲斐バンド『HERO(ヒーローになる時、それは今)』(1979年)では、恋人にとってのヒーロー賀自分である、という文脈で「ヒーロー」という言葉が使われているのがわかります。
Mr.Children『HERO』(2004年)も同様です。

でもヒーローになりたい
ただ一人 君にとっての
つまずいたり 転んだりするようなら
そっと手を差し伸べるよ

HERO(Mr.Children)


FUNKY MONKEY BABYS『ヒーロー』(2010年)は、恋人ではなく、「お父さん」をヒーローに例えた歌詞になっています。

最寄り駅の改札抜ければ
いつもよりちょっと勇敢なお父さん Hero!

ヒーロー(FUNKY MONKEY BABYS)

このように、そのままの意味でかっこいい「ヒーロー」が歌詞で描かれることは昭和~平成中期には少なかったと言えます。

平成後期~令和の「ヒーロー」たち

それに比べて、平成後期~令和にかけては、「ヒーロー」がその字の通りの文脈出使われることが増えているように思います。印象的だったのは、SHISHAMO『明日も』(2017年)。

だけど金曜日が終われば大丈夫
週末は僕のヒーローに会いに行く

明日も(SHISHAMO)

SHISHAMO『明日も』では、恋愛における恋人=ヒーローではなく、「誰よりも早く立ち上がるヒーロー」「ヒーローに自分重ねて」など、いわゆる憧れという文脈で「ヒーロー」という言葉が使われています。

安室奈美恵『HERO』(2018年)も印象的です。

君だけのためのhero
どんな日もそばにいるよ

HERO(安室奈美恵)

歌詞だけを見ると、一見、恋人文脈での「ヒーロー」とも受け取れますが、こちらはリオデジャネイロオリンピックのテーマソング。アスリート=ヒーロー、が基軸となっていると考えられます。これも、いわゆる憧れという文脈ですね。

アニソンにおいても、その主人公や登場人物のヒーロー性に焦点が当てられた歌詞も目立ちます。「ヒーロー」というフレーズh扱っていないものの、Ado『私は最強』(2022年)やYOASOBI『アイドル』(2023年)Creepy Nuts(Bling-Bang-Bang-Born)はその例といえるでしょう。

私の夢は みんなの願い
歌唄えば ココロ晴れる
大丈夫よ 私は最強

私は最強(Ado)

誰もが目を奪われていく
君は完璧で究極のアイドル
金輪際現れない
一番星の生まれ変わり

アイドル(YOASOBI)

鏡よ鏡答えちゃって
Who’s the best? I’m the best! Oh yeah

Bling-Bang-Bang-Born(Creepy Nuts)

最近では、カリスマックス(Snow Man)(2025年)が記憶に新しいですね。

誰も真似できやしないな
StarのGuidance CHARISMA
(中略)
Everyone 必ず信念を貫く
We are! We are! No.1

カリスマックス(Snow Man)

歌詞は時代を映す

SHISHAMOの『明日も』(2017年)がリリースされた際、「ヒーロー」という言葉の使われ方に新鮮な驚きを覚えたのを今でも記憶しています。それまでのJ-POPにおけるヒーロー像は、日常の中にいる、身近な人をヒーローに例えることが一般的でした。しかしこの曲を境に、「遠くにいる絶対的なヒーロー」が歌詞に登場する機会が目に見えて増えたように感じます。

こうした変化の背景には、昨今の「推し活」文化の定着があるのではないでしょうか。完璧な超人を崇め、熱狂する。そんな今の時代の空気が、歌詞におけるヒーロー像を変化させたのかもしれません。

このように、歌詞は時代の空気を反映します。

  • 今、世間は何に憧れ、何を求めているのか?
  • どのような言葉が共感を集め、逆にどのような表現が今の感覚にそぐわないのか?

こうした社会の動き、変化に常にアンテナを張り続けることは、作詞にとってとても大切な視点なのです。

投稿者プロフィール

昆 真由美
昆 真由美作詞家・作詞講師
作詞家/作詞講師。
代表作はNiziU『SWEET NONFICTION』ShutaSueyoshi『HACK』など。
著書に『作詞入門 実例で学ぶポイントとコツ』『ヒット曲に学ぶ作詞の絶妙表現50《平成編》〜歌詞のタイプで磨く作詞技法』など4冊の著書がある。
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