突然ですが、主人公、と聞くと、映画やドラマに出てくるような、華やかでみんなが憧れるような人、ヒーローやスーパーマンなどをイメージするかもしれません。しかし、映画やドラマの主人公にも、一見平凡な中にヒーロー性を持つ人がいますね。J-POPの歌に描かれる主人公は、どちらかというとこのタイプが多くなっています。聞き手が自分と重ねられる部分があるような、平凡な部分をどこかに持っていること。これが共感を生むポイントになります。ただし、これはJ-POPの話で、アニソンに関してはこの限りではありません。アニソンの場合は、アニメに登場するスーパーヒーローや特殊能力を持ったキャラクターがそのまま歌詞の中で描かれます。今回はJ-POPの歌詞に登場するキャラクターについて見ていきましょう。
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失恋ソングに描かれるヒーロー性
歌の主人公は一見平凡な中にヒーロー性を持つ、と書きました。ヒーロー性とは、誰かと違って特別な能力があるといったことではありません。むしろ、特別な人を書いてしまうと、聞き手の共感を得にくくなってしまいます。
たとえば、近年のヒット曲には失恋した主人公が描かれる曲がいくつかあります。
失恋中の主人公は、「かっこいい」とは程遠いように思いますが、どうでしょうか?
たとえば「猫」の主人公は、別れた相手を想いながら「(猫のように)いつかフラっと現れてくれ」と願い、「Pretender」の主人公は切ない気持ちを抱えながらも「君はキレイだ」と感じ、「ドライフラワー」の主人公は「顔も声も不器用なとこも全部全部嫌いじゃない」と言います。「情けない」はずの主人公が、なぜかかっこよく、素敵に感じてしまったり、感情移入や共感したりすることがあります。
「その人なり」の視点が書かれているかどうか
歌の中の主人公は、特別な人物ではありません。でも、感情移入してしまうのはなぜなのでしょうか。
上記に挙げた歌は、どれも主人公が失恋に対して「自分なりの解釈」を語っています。ただ「別れた」「悲しい」を繰り返すわけではなく、歌を通して二人の間柄やどんな風に好きだったのかが伝わってきます。
たとえば、「Pretender」で「(君の)髪に触れた」時に、主人公は「痛いや でも 甘いな」 と感じます。人によっては、髪に触れた時に「抱きしめたい」と思うかもしれませんし、極端に言えば、叶わぬ恋を悟って「傷つけてやりたい」なんて思うかもしれません。「傷つけてやりたい」と思う人が主人公なら、サビの最後で「君はキレイだ」ではなく「君とはもう二度と会わない」などになるかもしれませんね。
シチュエーションが同じでも、人によって感じ方は様々。「他の誰でもない、この人(主人公)ならではの感性」が描かれていることが、キャラクターを際立たせるポイントになります。
歌の主人公は必ずしもヒーローではない
歌詞の中の主人公は特別なヒーローである必要はありません。どこかにいそうな、どこにでもいそうな、でも歌の中で生きている一人の人間、を上手に表すことが必要になります。
シチュエーションや気持ちの羅列だけでは、聞き手の共感を得ることは難しいです。歌の主人公ならではの視点、感じ方など、「主人公らしさ」を歌詞の中にしっかり書くことで聞き手の共感につながっていくのです。
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