歌詞を書くときに、その歌詞がどんな場面でリスナーに聴かれるか意識したことはありますか?歌の聴かれ方は、時代によっても変わってきています。今回は、歌のつかみ方の変化と、その背景にある現代人の集中力について考えていきます。
「歌い出し7秒以内」から「冒頭3秒が命」へ
授業でずっと「歌い出しは7秒以内を目指しましょう」と伝えてきました。ところが、令和に入ってからは状況が変わってきています。今や冒頭の3秒が命——しかも、それはAメロやサビに限った話ではありません。
平成の時代は、曲を頭から、もしくはサビから聴くのが基本でした。だからこそ、AメロやBメロ、サビの歌い出しの言葉に気を配っていました。母音が「あ」だと歌いやすい・聴こえやすい、歌い出しにどんな言葉を置けばリスナーの心をつかめるか……そうした工夫が重要でした。でも、最近はそれが大きく変わってきています。
なぜ「7秒」だったのか?——金魚と現代人の集中力
その背景を探るうえで興味深いデータがあります。
「人間の集中力は金魚より短い」

金魚の集中力は9秒しか続かないと言われていますが、現代人の集中力はなんと8秒。これは、米マイクロソフトのカナダ研究チームが2015年5月に発表した研究結果です。約2000人の参加者の脳波を測定したところ、2000年には12秒あった集中力の持続時間が、2013年には8秒まで短くなっていたことが明らかになりました。
参考:ダイヤモンド・オンライン(2017年1月)/アゴラ/日本経済新聞
なぜ「3秒」に変化?プラットフォームの進化と「流し見」文化
Instagramで文字が読まれないという話は、かなり前から言われてきました。最近ではTikTokをはじめとした動画プラットフォームの台頭で、つまらなければ即スワイプという文化がさらに加速しています。
IT技術の進化によって、情報との接し方が根本から変わりました。それにともない、音楽の「聴かれ方」も大きく変わっているのです。
想定外の場所から、曲が広がる時代
動画プラットフォームでは、どの部分が切り取られて使われるか、制作側にはコントロールできません。ユーザーが「面白い」と感じた箇所がそのまま拡散される。それはAメロかもしれないし、サビ前かもしれない。
たとえばSEKAI NO OWARIの「Habit」。サビ「俺たちだって動物 こーゆーのって好物」が注目されたのはもちろん、2番のAメロ「大人の俺が言っちゃいけない事言っちゃうけど」がフォーカスされたのは、当時としてはかなり珍しいことでした。
私がShuta Sueyoshiさんと共作詞した「HACK」でも同じことが起きました。2020年はサビが、別のタイミングではサビ前が話題になり、2026年にはAメロがよく使われるという現象が生まれました。
制作側に求められる「マルチな意識」
音楽は聴かれる場所も、聴き方も、使われ方もさまざまです。動画プラットフォームでは特にそれが顕著で、想定外の使われ方をするのも面白さのひとつと言えます。
とはいえ、制作時にはある程度「どこで・どのように聴かれるか」を意識することが大切です。どこを切り取られても成立する言葉の強さ。それが今の時代の作詞に求められているものかもしれません。
投稿者プロフィール

- 作詞家・作詞講師
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作詞家/作詞講師。
代表作はNiziU『SWEET NONFICTION』ShutaSueyoshi『HACK』など。
著書に『作詞入門 実例で学ぶポイントとコツ』『ヒット曲に学ぶ作詞の絶妙表現50《平成編》〜歌詞のタイプで磨く作詞技法』など4冊の著書がある。
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